創作ごった煮
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夜は、とても優しい。
口に出すことはなく、そう思った。まだ夜は来ない。赤い太陽が、僕の影を伸ばしていた。
「シラキ、今日の学校はどうだった?」
「どうもしないよ、いつも通り。」
「またずっと一人だったんでしょ」
無邪気に笑って隣を歩く少年、ウタに影はない。幽霊では、ないそうなのだけど。
影が無いせいか知らないけれど、ウタが僕以外の人間と話しているところを見たことがないし、存在に気づかれもしない。冬の寒い日にも白い息を吐かないし、夏の暑い日にも汗一つかかない。
けれど、こんな穏やかな気候の日は、ウタが普通でないところは影だけなのだ。
早く、夜にならないだろうか。
「シラキ、もうすぐ夜になるよ」
「わかってる」
空の端は紺色に染まり、止まった影が色濃く落ちる。
「帰らなくていいの?」
「もう少し」
「そう、」
太陽が沈んで、けれど辺りはまだ明るい。
(早く、早く)
彼を、普通の人間にしてあげて。振りだけでも、誰もそれに気が付かなくっても。
無表情で足元を見下ろしていると、ウタが穏やかに笑った。
「ね、シラキ。夜は明るいねえ」
「夜は、暗いよ」
「ううん、ほら、空には月が出ていて、家々は明かりを零すし、至るところに街灯があるでしょう」
まるで、影のできないところなど無いのだと言うふうに。
確かに暗い公園で、僕の足元には影が落ちていた。ウタの顔が見える。
「………そうだね、」
そうだね、ほんとうだ。
夜すら、きみに優しくない。
影が無いせいか知らないけれど、ウタが僕以外の人間と話しているところを見たことがないし、存在に気づかれもしない。冬の寒い日にも白い息を吐かないし、夏の暑い日にも汗一つかかない。
けれど、こんな穏やかな気候の日は、ウタが普通でないところは影だけなのだ。
早く、夜にならないだろうか。
「シラキ、もうすぐ夜になるよ」
「わかってる」
空の端は紺色に染まり、止まった影が色濃く落ちる。
「帰らなくていいの?」
「もう少し」
「そう、」
太陽が沈んで、けれど辺りはまだ明るい。
(早く、早く)
彼を、普通の人間にしてあげて。振りだけでも、誰もそれに気が付かなくっても。
無表情で足元を見下ろしていると、ウタが穏やかに笑った。
「ね、シラキ。夜は明るいねえ」
「夜は、暗いよ」
「ううん、ほら、空には月が出ていて、家々は明かりを零すし、至るところに街灯があるでしょう」
まるで、影のできないところなど無いのだと言うふうに。
確かに暗い公園で、僕の足元には影が落ちていた。ウタの顔が見える。
「………そうだね、」
そうだね、ほんとうだ。
夜すら、きみに優しくない。
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