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創作ごった煮
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*近親相姦表現

ストゥンプという一族が居る。
狼のような耳、鋭い牙。血をすすり肉を食らう。

勿論理性はあるので、無闇矢鱈にひとを襲うことはない。



げほ、ジェニファルドは無意識に出る咳に口を押さえた。
ストゥンプには男が少ない。この集落でも、男はせいぜい2割程度だ。
だから、危険な狩りには女が行くし、男は死ぬまでただ子孫を残すことを考えるだけ。
広い、障害の少ない草原を、ジェニファルドはぼうっと見つめた。周りに女は居ない。男も、テントの中に入っている。

幼い頃に病気がちだったため、ジェニファルドは特別大事にされてきた。大事な子種だ。失ってはいけない。そう考えているのだろう、まだ10をいくらか越えた歳のジェニファルドにも、それくらいはわかった。
げほ、げほ。
今度は、二度。
まだ誰にも言ってはいないが、また何かの病気になったらしい。
どうせ、言ったって手厚い看護という監禁が始まるだけだ。煩わしい。
この病気が元で死んでも、ジェニファルドにはなんの後悔もなかった。一族のみんなは、悲しむかもしれない。けれどそれは、「ジェニファルドが死んだから」ではなく、「一族の数少ない男が死んだから」だ。
ざあ、肌寒い風が草原を撫でる。そろそろ、狩りに行った女たちが戻ってくる頃かもしれない。テントに戻ろう。
そう思ってくるりと踵を返すと、後ろから声がかかった。

「ジェニファ、あまり外に出てはいけないと言ったでしょう」

長く癖のある髪を無造作に垂らし、動きやすそうな格好をしたストゥンプの女。
ジェニファルドは小さく溜め息をついて振り返った。

「さっき出たばかりで、今から戻るところだよ、キャサリン」

キャサリンは、りりしい眉を小さく寄せて「本当?」と尋ねる。嘘だ。外に出たのは、随分前だ。
けれど、そんなことはおくびにもださずにジェニファルドは微笑んだ。

二人は、同腹の姉弟である。
同じ女が、同じ男の精子を受けてできた子。
そんなことは、関係ないけれど。

「ジェニファは、これからもっともっと子供を残さなきゃいけないんだからね。身体には気をつけないと。」

「大丈夫、心配要らないよ。もう身体も弱くないし。」

二人は、並んで歩き出す。8つほど歳が離れているため、キャサリンのほうが身長は高い。
空はすっきりと晴れていた。この地域の太陽の昇降は、ストゥンプの役目ではない。だから、明日の天気も、太陽が何で出来ているのかも、ジェニファルドは知らない。
もう咳はできない。ジェニファルドはくすりと笑った。キャサリンの影を、じっと見つめる。

「キャサリン、そろそろ狩りに行かないほうがいいんじゃない?」

前より、腹が膨らんでいるような気がする。
ジェニファの言葉に、キャサリンは腹を撫でた。

「そうね。流産するわけにもいかないし、」

にこり。ジェニファルドは、キャサリンと眼を合わせて笑った。

「僕の、『初めての子供』だしね」

男が少ないストゥンプでは、殆どの人間と血が繋がっている。
両親が同じだろうと、子供を作るのに問題は無い。
ジェニファルドの子供は彼女だけではなく他の姉の腹にも居るし、名前を覚えていない女の腹にだっている。
愛は必要ない。相手を縛るものは持たない。

これから、何人の女と身体を重ねて、そして何人が僕の血を引き継ぐんだろう。

途方も無い未来を、ジェニファルドはぼんやりと思う。
出そうになった咳を堪えて、はやくこの役目が終わることを願った。



******
ジェニが12くらいのときの話


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