忍者ブログ
創作ごった煮
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



ぼんやりと、明りが灯っている。
バーバリーの家の地下には、広い書庫があった。幻燈世界の数少ない本や、彼女がいろいろな世界から集めてきた本があるという。
それを、和樹は暗いランタンの光で読んでいた。


和樹がここに来たのは、「異世界の研究」の為である。
それに貢献せねば、と、知らない文献を漁る。論文を読むのには慣れたつもりだったが、ここにある本は、すべてまるでファンタジー小説のようだった。戻ったら、研究チームに文学者を加えてもらわなければ。

ふと、カタンと音がした。
和樹が振り向くと、ドアのところには金髪の少女。アンリだ。
同じようなランタンを片手に、ティーポットやカップを乗せたトレイを持って、にこりと微笑んでいる。

「和樹さん、はかどっていらっしゃいます?朝からずっとでしょう。お茶を入れたんですわ、如何です?」

断るのも悪いし、折角だから。和樹は本を閉じた。
地下室の入り口には、簡素な机と椅子が置いてある。アンリは、そこにトレイを置いた。

「ありがとう、アンリ。頂くよ」


とぽぽ、ゆっくりと紅茶が入る。
ランタンの薄暗い明りで、カップの中は紅茶とは思えない黒色に染まっていた。
アンリが差し出すそれを受け取って、和樹はゆっくりと口をつけた。元の世界の紅茶と、同じ味。

「毎日、ご苦労様ですわね。」

「その為に来たんだから」

いつか戻るときに、沢山の事を持って帰らなければいけない。次に戻れるのは、向こうの世界で3年後だと聞いた。
向こうの世界では3年でも、こちらではいつ終わってしまうかわからない。できるだけ、多くを学ばなくては。

「今日はお勉強日和ですから、きっとよく進みますわ。」

「え?」

「外は大雨でしたわ。お勉強日和、でしょう?」

「へえ」

今日は雨にするとは聞いていなかったが、バーバリーのことは和樹にはわからない。地下でよかったですわね、笑うアンリに笑って答える。

「では、また後で取りに来ますわ。あまり御無理はなさらないように。」

「わざわざありがとう」

「いいえ」

立ち上がって、アンリはランタンを一つ、暗闇に向けた。ギィ、近いはずの扉が遠くで響くように感じる。和樹はゆっくりと紅茶を飲んだ後、また文献を探しに行った。



それなりに時間が過ぎた頃に上に上がると、空はすっきりと晴れていて、外の地面は全く濡れていなかった。




PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
E-Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
TrackbackURL:
ブログ内検索
カレンダー
05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
プロフィール
HN:
花 しみこ
HP:
最新コメント
アクセス解析

Template "simple02" by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]