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創作ごった煮
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*百合


一目惚れだ、と言われた。
見た目が好きなのだ、と。

付き合って半年経つ今でも、私はその言葉を忘れてはいない。


「由紀子」

ソファに並んで座っていた恋人に、視線をやらずに声をかける。
由紀子は、私の2つ年上。美人で、しっかりとしているのに、どこか子供っぽい女性だ。
恋人が女性。女同士のこの関係は、世間一般ではまだ受け入れられないだろう。私も、告白されたときは戸惑った。けれど結局断らなかったのだから、私にもそのケはあったのだろう。別段不思議なことでも、悩むことでもない。

ぼんやりと面白くも無いローカル番組から、由紀子はこちらに視線を向けた。

「なに?千絵」

「由紀子は、わたしのどこが好き?」

1年前に告白してきたとき、彼女は「見た目」と言った。話したこともないけど、見た目がとても好きなのだと。
ふと、友人が、前に、「見た目が好きって最強」と言っていたのを思い出す。
「見た目が好きだと、中身が多少悪くても、別れようってすぐには思わない」と。
けれど、それは。

由紀子は、楽しそうに「うーん」と呟いた。

「髪の毛やわらかくて気持ちいいし、目ぇおっきいし、肌すべすべだし、手の形キレイだし、」

つらつらと、由紀子は述べる。私は、それを切るように「ふうん」と少し強く言った。
多分、きっと、私は由紀子が好きだ。
女同士で結婚できるなら、しても良いと思えるくらい。
でも、由紀子は違う。由紀子が好きなのは、私の外見だ。洋服や、雑貨のように、今気に入ってるカタチというだけ。

私が由紀子の好きなカタチでいられる期間なんて、そう長くは無い。

人は成長する。それは老いるのと同義で、髪も、肌も、否応なしに変わっていく。
今の見た目が好きという由紀子は、老いて変わった私になど興味を持たないのだろう。
「見た目が好き」。それは、私に確実ないつかの終わりを見せる。

(由紀子は、見た目が好きじゃなくなったら、きっと私のことなど簡単に捨てる)

「どしたの、千絵。突然」

「なんでもない。テレビが、つまんなかったから」

「ふーん。」

由紀子は、納得したのかわからない顔で、またテレビに向き直った。

捨てられたくない、と思う。
始めたのは、由紀子の筈なのに、この関係を終わらせるのも、きっと彼女だ。
彼女が、私の見た目を好きじゃなくなるときが、いつか来る。

(そんなことで、捨てられるなら)

由紀子が、あはは、とテレビを見て笑う。番組には、最近彼女が「可愛い」と言っていたアイドル。私とは似ていない。

(今、まだ、私の見目を好きと言ってくれるうちに)

それこそ、雑貨のように。

(壊れて、死んでしまいたい)



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