創作ごった煮
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小話、掌編、散文詩。お好きによんでください。
追記にてタイトルをつけました。
Twitter公開時から多少変えています。
1
気遣い屋の彼女がフランスで掛け時計を買って送ってきたので、彼女が帰ってくるまでそれで彼女の過ごす時間を想像しようとしたのだけれど、市役所が鳴らす昼のチャイムと同時に時計から人形が現れて、手に持った小さな鐘を12度叩いた。
2
彼女は魔法のセールスをやっていて、購入特典の余りと言ってごみ箱を持ってきた。ゴミ出しの必要がなく、捨てたものは宇宙に行くという!ところで宇宙葬というのがあって、投げた灰は地球の周りを漂い、ときに大気圏にぶつかり流れ星になるらしい。今流れた星は、いったい昨日のサンマの骨だったのだろうか?
3
はらはらとまばらに拍手が散った。巨女の背から首を伸ばしてステージを見遣ると、垂れ幕から真っ赤な目をした小さなゾウが現れる。子象のあどけなさはなく、屹度あれが成象なのだろうけども、一頭きり調教師の腰の背の高さのそれが球に乗ろうが綱を渡ろうが盛り上がりに欠けるなとしか思わなかった。首に疲れを感じたが、元につけば巨女の背中のひだしか見えぬ。仕方なく階段を向くと、無限に段が続くように見えた。その段を登り豆粒ほどの姿から女に変わり来るのはポップコーン売りであった。一杯三百五十円のキャラメル味を購入し、ひとつ口に含むとばちばちと激しくはじけた。このようなのは星の欠片に違いなく、キャラメルと薄暗闇に騙されたと覚った。三百五十円の損をした。
4
「8月がとうとう終わるのだってさ」「なんだって」「明後日には鳥が来るらしい」「そりゃあ」背後の会話に首を傾げる。何もしなくとも8月なんて終わるし、9月は来る。無礼と知りつつもウィスキイに酔っ払った私はその会話に入るべく振り返った。「鳥が来るから8月が終わんのかい」「そうさ」応えたのは蛇であった。「そんなら」これはまずい、咄嗟に思うもアルコールが口を緩ませる。「そんなら俺が追い返してやるさ」背中に汗が伝っていた。鳥を追い返すことなんてのは容易いとわかっていた。蛇ばかりがなんともなくおそろしく静かである。蛇はからからと笑った。「我々の餌は鳥の卵だよ、君」
5
月の出る晩について尋ねると、彼女は丸い目をぱちりと瞬かせるだけだった。彼女の耳はゆるやかに大きい。「それよりもりんごのケーキはいかが?卵を上に乗せるのよ」茶色に割り乗せられたそれには卵黄がなかった。
6
母は星の砕いたのが入っているのだと言ったが、それは間違いなく月であるはずだった。原材料にはハッカ油と書いてあった。月とは雪の晩にはハッカの塊に似るのであるからして、確信を得るに至った。
7
十二時間式の時計が止まった際に指しているのはいつも夜であることは明白だ。なぜかと尋ねるならまず時というのは夜のためのものであると知っていなくてはいけない。「夜に時間なんか気にするやつがいるだろうか」「いいや、月ばかりだろう」
8
赤ん坊の足にそれぞれ二つずつ親指が付いているのを見て、母親は喜んだ。ベビーベッドは窓の側、つまり母親は悪魔か魔女が子の親指を取りに来ても一度の余裕があると感じたのである。しかして赤ん坊は暖炉に近づいて赤く焼けた火箸を掴んだのであった。
9
壁紙に花が咲いていないと不思議に思い、隣席で珈琲を啜る男に「おい。」と声をかけた。猫背の男を良く見ればソーダ水を隠す様に飲んで居る。仕立ての良いスーツはつまり警察官であろう。ならば尚更に伝えおくべきであると、そのことを告げると、男は顔を蒼白に染めた。ソーダ水は何時の間にやら赤く変わっていた。
10
例えるなら生の鶏皮に似ていた。やわらかく、弾力がある。見目形は粘土のようだった。それが現れたと同時に、世界が生々しさを失ったのである。色も匂いも何処か素っ気ない。どうやれば元に戻るか行きがかりの月に尋ねたら食せと投げやりに応えがあったが、どうも肉らしい様子なので、ベジタリアンの禁忌に触れやしないかと困り切っている。
11
今迄夜道を見張っていたそれらの代わりに、政府は真太陽灯の普及に努め始めた。一旦点けたならば、冬の朝焼けの如く辺りが白むのである。太陽と云うだけあって、真太陽灯の照光範囲は並のものではない。価格もべらぼうではなかったから、どうなったかって、販売会社はすぐに販売を中止した。
12
DNAの遺伝子ひとつまで自由になった昨今。病気なのだ、目の前の彼女の緑の肌も店員のピンクの瞳も。一時的なウイルス感染と、いつでも治せる治療薬に頼りきっている。「その色は、どうかな」「やっぱりちょっと濃かったな」そういうことじゃないんだが、しかし彼女は俺に興味が少ないのだから、俺が何を好もうと記憶にも残らないんだろう。
13
老人が透明な紙でもって障子の穴を塞ぐように月を貼り合わせているのを、名前の知らないカクテルを飲みながら見上げていた。カクテルは月と同じ浅葱色をしている。なんで月が破けたんだ。ひとりごちると、貼り合わされる前の月がコウモリの仕業だと言った。最近は、鍵穴にまでコウモリが棲む。
14
A氏の故郷では人形なんかを作ってはいけないらしい。「それはこどもだけですよ」否定するA氏の両手には人差し指がない。こどもの手は人形に命を与えるから、身長120センチ体重25キロを越えたときに指を落として能力を失わせるのだ。それでも指を落とす前に形作ってしまうこともある。彼の故郷では、いびつなトンボが夕空を飛んでいる。
15
大気圏目前にごみの集積場ができた。大気圏では燃えかすすら燃え尽きるから、埋めたてごみの日がなくなった。しかし質量保存の法則かなにかによってものが完全になくなることはないはずだから、今朝ごみに出した穴あき靴下もどうにか地上に帰ってくることだろう。
16
階段の、五段むこうに幽霊がいる。登りも降りも、きっかり五段あいだを開けてついてくる。六段しかない階段なら一瞬だけで、五段以下なら現れない。近寄ってきたこともない。ただ、五段むこうから、幽霊はこっちを見ている。
17
最近町におなじタトゥーを入れているひとが増えた。いわば、神の落款であるらしい。もちろん生き物すべてを神が手ずからつくるわけがなく、本物は生まれたときからそれが刻印されているのだ、犬であろうとネズミであろうと。「マスター、ぼくのマークは本物なんだよ」「今日だけで八人はそう言ったね。」
追記にてタイトルをつけました。
Twitter公開時から多少変えています。
1
気遣い屋の彼女がフランスで掛け時計を買って送ってきたので、彼女が帰ってくるまでそれで彼女の過ごす時間を想像しようとしたのだけれど、市役所が鳴らす昼のチャイムと同時に時計から人形が現れて、手に持った小さな鐘を12度叩いた。
2
彼女は魔法のセールスをやっていて、購入特典の余りと言ってごみ箱を持ってきた。ゴミ出しの必要がなく、捨てたものは宇宙に行くという!ところで宇宙葬というのがあって、投げた灰は地球の周りを漂い、ときに大気圏にぶつかり流れ星になるらしい。今流れた星は、いったい昨日のサンマの骨だったのだろうか?
3
はらはらとまばらに拍手が散った。巨女の背から首を伸ばしてステージを見遣ると、垂れ幕から真っ赤な目をした小さなゾウが現れる。子象のあどけなさはなく、屹度あれが成象なのだろうけども、一頭きり調教師の腰の背の高さのそれが球に乗ろうが綱を渡ろうが盛り上がりに欠けるなとしか思わなかった。首に疲れを感じたが、元につけば巨女の背中のひだしか見えぬ。仕方なく階段を向くと、無限に段が続くように見えた。その段を登り豆粒ほどの姿から女に変わり来るのはポップコーン売りであった。一杯三百五十円のキャラメル味を購入し、ひとつ口に含むとばちばちと激しくはじけた。このようなのは星の欠片に違いなく、キャラメルと薄暗闇に騙されたと覚った。三百五十円の損をした。
4
「8月がとうとう終わるのだってさ」「なんだって」「明後日には鳥が来るらしい」「そりゃあ」背後の会話に首を傾げる。何もしなくとも8月なんて終わるし、9月は来る。無礼と知りつつもウィスキイに酔っ払った私はその会話に入るべく振り返った。「鳥が来るから8月が終わんのかい」「そうさ」応えたのは蛇であった。「そんなら」これはまずい、咄嗟に思うもアルコールが口を緩ませる。「そんなら俺が追い返してやるさ」背中に汗が伝っていた。鳥を追い返すことなんてのは容易いとわかっていた。蛇ばかりがなんともなくおそろしく静かである。蛇はからからと笑った。「我々の餌は鳥の卵だよ、君」
5
月の出る晩について尋ねると、彼女は丸い目をぱちりと瞬かせるだけだった。彼女の耳はゆるやかに大きい。「それよりもりんごのケーキはいかが?卵を上に乗せるのよ」茶色に割り乗せられたそれには卵黄がなかった。
6
母は星の砕いたのが入っているのだと言ったが、それは間違いなく月であるはずだった。原材料にはハッカ油と書いてあった。月とは雪の晩にはハッカの塊に似るのであるからして、確信を得るに至った。
7
十二時間式の時計が止まった際に指しているのはいつも夜であることは明白だ。なぜかと尋ねるならまず時というのは夜のためのものであると知っていなくてはいけない。「夜に時間なんか気にするやつがいるだろうか」「いいや、月ばかりだろう」
8
赤ん坊の足にそれぞれ二つずつ親指が付いているのを見て、母親は喜んだ。ベビーベッドは窓の側、つまり母親は悪魔か魔女が子の親指を取りに来ても一度の余裕があると感じたのである。しかして赤ん坊は暖炉に近づいて赤く焼けた火箸を掴んだのであった。
9
壁紙に花が咲いていないと不思議に思い、隣席で珈琲を啜る男に「おい。」と声をかけた。猫背の男を良く見ればソーダ水を隠す様に飲んで居る。仕立ての良いスーツはつまり警察官であろう。ならば尚更に伝えおくべきであると、そのことを告げると、男は顔を蒼白に染めた。ソーダ水は何時の間にやら赤く変わっていた。
10
例えるなら生の鶏皮に似ていた。やわらかく、弾力がある。見目形は粘土のようだった。それが現れたと同時に、世界が生々しさを失ったのである。色も匂いも何処か素っ気ない。どうやれば元に戻るか行きがかりの月に尋ねたら食せと投げやりに応えがあったが、どうも肉らしい様子なので、ベジタリアンの禁忌に触れやしないかと困り切っている。
11
今迄夜道を見張っていたそれらの代わりに、政府は真太陽灯の普及に努め始めた。一旦点けたならば、冬の朝焼けの如く辺りが白むのである。太陽と云うだけあって、真太陽灯の照光範囲は並のものではない。価格もべらぼうではなかったから、どうなったかって、販売会社はすぐに販売を中止した。
12
DNAの遺伝子ひとつまで自由になった昨今。病気なのだ、目の前の彼女の緑の肌も店員のピンクの瞳も。一時的なウイルス感染と、いつでも治せる治療薬に頼りきっている。「その色は、どうかな」「やっぱりちょっと濃かったな」そういうことじゃないんだが、しかし彼女は俺に興味が少ないのだから、俺が何を好もうと記憶にも残らないんだろう。
13
老人が透明な紙でもって障子の穴を塞ぐように月を貼り合わせているのを、名前の知らないカクテルを飲みながら見上げていた。カクテルは月と同じ浅葱色をしている。なんで月が破けたんだ。ひとりごちると、貼り合わされる前の月がコウモリの仕業だと言った。最近は、鍵穴にまでコウモリが棲む。
14
A氏の故郷では人形なんかを作ってはいけないらしい。「それはこどもだけですよ」否定するA氏の両手には人差し指がない。こどもの手は人形に命を与えるから、身長120センチ体重25キロを越えたときに指を落として能力を失わせるのだ。それでも指を落とす前に形作ってしまうこともある。彼の故郷では、いびつなトンボが夕空を飛んでいる。
15
大気圏目前にごみの集積場ができた。大気圏では燃えかすすら燃え尽きるから、埋めたてごみの日がなくなった。しかし質量保存の法則かなにかによってものが完全になくなることはないはずだから、今朝ごみに出した穴あき靴下もどうにか地上に帰ってくることだろう。
16
階段の、五段むこうに幽霊がいる。登りも降りも、きっかり五段あいだを開けてついてくる。六段しかない階段なら一瞬だけで、五段以下なら現れない。近寄ってきたこともない。ただ、五段むこうから、幽霊はこっちを見ている。
17
最近町におなじタトゥーを入れているひとが増えた。いわば、神の落款であるらしい。もちろん生き物すべてを神が手ずからつくるわけがなく、本物は生まれたときからそれが刻印されているのだ、犬であろうとネズミであろうと。「マスター、ぼくのマークは本物なんだよ」「今日だけで八人はそう言ったね。」
1.日本時間
2.宇宙葬
3.サーカス
4.8月が
5.うさぎ
6.ヴェポラップ
7.時計が止まった
8.魔女の薬には
9.花泥棒
10.リアル(お題)
11.街灯(お題)
12.流行(お題)
13.セロテープ(お題)
14.不器用(お題)
15.靴下(お題)
16.幽霊
17.タトゥー(お題)
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